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新シリーズ 中小企業経営者のためのレッスン16 12.M&A


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中小企業経営者のためのレッスン16

新シリーズです。
過去掲載したものを現在の状況も加味してリライトしてお送りします。

是非お読みください。

インデックス

1.資金繰り
2.キャッシュフロー計算書
3.売上とはリスクとの交換
4.中小企業支援策の体系
5.税制
6.借入制度・保証制度
7.資金調達手段のバリエーション
8.経済産業省補助金
9.厚生労働省助成金
10.事業継承と再生支援
11.単位採算性
12.M&A
13.FC

ラスト3つは伏せておきます。

****

 

12.M&A

 

(1)M&Aの背景

 

M&Aがなぜ今、流行るのでしょうか?

 ひとつには事業主の高齢化という売る側の事情があります。そして、買う側の事情としては、事業をゼロから育てる時間の省略のメリットでしょう。

 加えて、コロナ禍による経営の窮状があるのかもしれません。

 

 ここで、M&Aをする際の最も大きなポイントは何でしょうか?

 それは、営業権、あるいは、株式の買い取りの値段でしょうか?

 私はそうではないと思います。

 売る側には売るだけの事情があります。

 特にコロナ期での業績低迷が理由となっている場合は要注意です。

 

 買った後の瑕疵担保の問題をどうクリアーしていくかが最大のポイントとなります。

 事業継続が可能で、それがキャッシュフローを生み出すならば、買取価格の回収は時間の問題に過ぎないからです。

 最近の事例では株式譲渡を受けた後で重大な不正が発覚したなどは後を絶ちません。

 その意味では、会社そのものを買い取る株式譲渡より、事業譲渡の方がリスクは低いと言えます。

 

(2)株式譲渡と事業譲渡の違い

 

 事業譲渡では、売り手企業が運営する事業の一部またはすべてが売買対象となります。

 具体的には、譲渡対象の事業に属する資産や権利義務が売買されます。

 あくまで事業を売買するため、すべての事業を売却したとしても、会社の経営権自体は存続します。

 

 一方で株式譲渡の場合、売買する対象は売り手企業の株式となります。基本的には、会社が発行している株式が売買されます。

 株式を売買する仕組み上、株主(経営陣)以外には何も変動は生じません。

 したがって株式譲渡では、売り手企業が持つ権利義務や許認可などが自動的に買い手に引き継がれます。

 

 この2つの手法の違いは極めて重要であり、勘違いすると買収した企業は経営の存続さえ危うくなることさえあります。

 

 全てを包括して買い取り、継承するということは、聞いていなかった資産・負債も継承するということです。

 聞いていなかった場合は、「瑕疵がある状態」ということになります。

これは第3者には、対抗できません。

 

・取引の主体

 事業譲渡と株式譲渡における違いは、取引を実施する主体です。

 事業譲渡では、企業(または個人事業主)同士で事業の売買を行います。

 一方で株式譲渡では、株主同士または株主と事業者によって相対の交渉で契約が結ばれます。

 したがって、取引の主体となるのは法人(事業主)ではなく株主となります。

 

・目的の違い

 目的も、事業譲渡と株式譲渡では異なり、事業譲渡は、一部の事業のみを取得・売却する目的で実施されます。

 これに対して、株式譲渡の目的は、会社の経営権の譲渡(獲得)です。

 

 事務処理として時間のかかるのは事業譲渡の方です。

 その譲渡する資産の算定・確定に時間がかかります。

 

・税制の違い

 税制では、事業譲渡の際に効く税制と、株式譲渡の際に効く税制があります。

 事業譲渡の際に財貨・サービス本体に加えて暖簾代と認められる部分は暖簾償却というのが効きます。

 また、株式譲渡の際にはその会社の持っている繰越損失が効きます。

これは、株式を買い取るので理解できるでしょう。

 

(3)M&Aでの買い取り価格査定

 

 企業の価値を評価する方法は大別してインカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチの3つがあります。その順で解説します。

 

DCF法 ここでは、将来利益率予想に基づく、割引計算が入ってきます。

DCF法はその中のインカムアプローチに分類される評価手法です。

 現在からある期間までの将来キャッシュフローを現在価値に換算して企業価値を評価する方法です。(16.各種の指標や戦略の矛盾点で現在は先の利益率を読むことは無理があることを述べています)。

市場比較法 これは規模の大きな事業所のM&Aで使われるもので、株価評価額を参考にするのが一般的です。

 中小企業において使っても構わないのですが、比較事例がないケースが多いのが泣き所です。

原価積み上げ法 これは、読んでその名のごとく、売却される企業の資産―負債で純資産額を計算していけばよいのですが、後述する隠れた瑕疵をどうみるかが難しい問題です。

 

(4)初期情報は、ノンネームシート

 

 M&Aの売り手の情報は、一定段階まで、会社名が伏せられるのが通例です。

 興味のある企業が(現在は主にネットをベースに)リサーチして、興味があると手を挙げた段階からアプローチする段階で守秘義務契約を交わすことと交換に公表されます。

 ただし、その売り手情報のTPOでおおむね察しがつきますので、噂として出てしまうことはよくあります。

 会社名を伏せたデータ票をノンネームシートと言います。

 

(5)瑕疵担保の問題

 

 これがM&Aの課題として最も重要な問題です。(仲介会社は一般的にこのリスクを負いません)。

 今はコロナ期であることも考え合わせるとM&Aでは売る側には何らかの事情を抱えているケースがほとんどでしょう?

 そして、その事実が全てクリアーになっているとは思わない方が正解でしょう。

 実際のケースを見ても、株式譲渡で買い取った後で大変な事実が判明したと言うのはよく聞きます。

 

・巨額の脱税行為をしていた。

・不正行為が行われていて許認可をM&A後に取り消されたなどです。

 リスクヘッジの方法として

・瑕疵が発見された場合の保証金の取り決めをしておく。

・前経営者に会長などの役員で残って貰う。

 などの手法がありますが結局はその売る側の個人に資力がなければ効力は薄いことになります。

 

 売買時に何らかの事情を抱えていた場合、売買代金は既に債務返済等で消えていると言うのがほとんどだからです。

 このような事態が、M&A成立後に発覚すると、その事業体の経営維持自体が不可能になる危険性すらあります。

 逆に、正常にランニング出来ていたなら、売買代金の額の回収の問題は、時間がどうなるかだけの問題になります。

解決法は

・出来るだけ事業譲渡にとどめる

・瑕疵担保の問題は、想像力を膨らませ、最も悪いシナリオも想定して対象企業を 調べる

 ということになります。

 

 

 

(6)総括

 

 例えば、全体が低迷している業界で、国が新たに許認可をおろさない場合があります。風俗営業法や、産業廃棄物中間処理などにおいてです。

 そこで、その事業体は財務面で弱っていても、その権利欲しさに株式譲渡を受けてしまう場合があります。

 このケース、ほとんどの場合、買収後に利益は出ません。

 それ以上に買い取った本体の事業にも悪影響を及ぼすこともあります。

 これは、極端な事例ですが、買い取った後に、既存の本体事業とのシナジー効果が出ないとM&Aは失敗すると一般的に言われています。

 

・最近使われている用語解説

 

バイアウト 自社株を売ること。バイアウトとは、経営が悪化したケースで自社を経営者または従業員が買収するものです。

 業績悪化を再建して今後も経営を続けていくためにすることでバイアウトとM&Aの違いは、実施する目的と買い手です。

 まず目的ですが、バイアウトでは買収した人物の収益拡大を狙っていくのが基本です。一方、M&Aでは他社が事業拡大や収益性の向上を狙う目的で買収します。

 

バリュエーション 株価などの金融商品や企業の価値

バリエーション(種類)ではありません。

 

 

 

続く

 

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