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STORYで考える経営戦略〜深い煙の向こう側〜1


要約動画です。  

 

 

 

主人公、遠野木蝶子の物語は、拙著、「補助金に頼らない経営戦略」でも読めます。

STORYは楽しんでもらえればいいのですが、今回の話のサブテーマは事業拡大は才能か?論理か?努力か?ということです。結論から言えば、才能です。人の能力とはそんなに差はありません。

(この総括も徐々にここに付け足していきます。)

全4回です。

 

ラ天使のエチュード  〜深い煙の向こう側〜

作 西河 豊

CAST 遠野木蝶子 井川大作

 

STORY

1

 京都故宮信用金庫・西陣支店、次長の井川大作はため息をついて、支店の時計を見た。

8時45分、本来ならば、とっくに帰宅している時間だった。

金融期間が遅くまで電気のついている時代はとうの昔で、最近では、部下に言うもっと多い叱咤は「ノルマ達成」ではなく「早帰り」である。

金融機関も生産性向上を言われる1業種なのである。

早帰りには良い面と悪い面があった。

良い面は明らかに付き合い残業が減った。特に新入社員にとってはもとから残業に付き合おうと言う意識はなかった。

悪い面は、どうしても風呂敷残業と言われる持ちかえっての仕事に繋がった。各金融機関は表面上これも禁止していた。

資料が顧客の機微な情報であり、紛失・漏えいしたら事件ものになるからである。

金融機関の場合、不祥事があった場合、監督庁である金融庁への報告義務があり、重い事故ならば改善命令に繋がり存立基盤も怪しくさせる。

井川は立ち上がり支店外に出て、販売機でホットコーヒーを買った。

そして、支店わきに座り、煙草にも火を付けた。

白い煙が立つ。

その淡い煙の向こう側に、遠野木蝶子の姿があった。いつも・・・

こんな時に蝶子さんだったらどうアドバイスしてくれるだろうか?

一瞬考えた井川だったが、「多分・・・流れに任せなさい」だろうなと思った。

 

まだ、コロナ特別借入の保証協会の特別枠活用の稟議書が20件余り残っているのだ。かといってそんなに複雑な作業ではない。

4号認定と言う売上が減少したと言う証明に嘘がないかをチェックして行くだけなのだ。

通常の融資稟議ならば、事業の実現可能性より返済の確実度を測る必要があるのだが、今は緊急時なので、その減少率だけを見ればよい。時代も変わったものだと感じた。

無条件に印を押していけばいいのだが、こんな、簡単なことで良いのだろうかという気持ちが処理を遅める。

相変わらず煙の向こうの蝶子さんはほほ笑んでいる。

井川が、西陣で伝説の人、遠野木蝶子と出会ったのは20年前だった。

 

2

井川が経験したのは4カ店でこの西陣支店がスタートだった。

48歳でここに戻るまで2カ店は、長岡支店と小倉支店だった。

井川が花屋「いおり」の担当を任されたのは入行して、4年目だった。

行内では、5級職の主任に任命された時期だった。

いおりの主人が、遠野木蝶子であり、当時では主要取引先の一つだった。

いおりは、地域の各金融機関が取引先として重きを置いていたおり、担当は、井川よりも上の役付きばかりだった。

そのためか、銀行家がかち合うといつも井川の順番は最後になった。

蝶子と親しくさせて貰ったのはそのお詫びの意味もあったのかもしれない。

いや、性格的も、他銀行に比して、井川の営業は控えめであり、それが逆に気に入られたのかもしれない。

いおりの歴史を簡単に説明しよう。

昭和50年に遠野木家は京丹波地方から西陣に出てきた。

それが、井川がいおりを担当する10年前だった。

その物件は以前は小さな集合市場だったのだが、どのような経緯で、遠野木蝶子の所有不動産になったのか知る者はいなかった。

一見、時代の動きには合わないような花屋が、なぜその後、業績を上げて行ったかも西陣地域では謎だった。

その頃から各金融機関のいおりへのアプローチが激しくなる。

その理由も明確ではない部分が多く、あそこと取引すると良いらしいという噂が金融機関内で駆け巡った。そう仕向けたのは蝶子さんだったのかもしれない。

いおりの業績は上向く一方で近隣の材木商の不動産も蝶子さんが買い取ることになり、花屋より高額の盆栽までも取り扱うことになった。

その頃、井川は、蝶子の営業力の恐ろしさを知ることになる。

その盆栽置き場は、いおりから100m南にあったのだが、蝶子さんはそちらにいることが多かった。

そこに、中小企業の社長らし人たちが役員用の大きな車で来るようになったのだ。

時間がたつにつれて、その車のナンバーは広域化して、広島や福岡など、かなり遠方になった。

そして、ほとんどの場合に高額な盆栽を購入していくのだった。

盆栽置き場で蝶子さんが事業家にマンツーマンで話をすると魔法にかかったように盆栽が売れて行くのだった。

その話の内容は外部の人には聞かせないように蝶子さんは徹底ガードしていた。

井川が不思議だったのは高価なものを購入した社長達が救われたというような満足げな顔をしていたことだった。

どのような仕組みなっているのか当時は分からなかった、後にいおりの事業展開を見てこういうことだったのではないだろうかという結論にたどりつくのだが、それは後の話である。

 

3へ  続く

 

 

「士業事務所経営 1億円へのエチュード(練習)」
  〜スケールの全軌跡〜

   

西河 豊 著 株式会社西河マネジメントセンター 監修

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