人材戦略支援において、本論文では、横軸に業務内容の棚卸しを、縦軸にいかに技術を
教育・伝承して、次代に残していくかに集中して論述する。
能力ある人を他企業より、多く採用して、教育・指導して、先鋭化していく手法も人材戦
略として重要である。しかし、このその企業のコアな部分の技術を伝えていくかという視
点を抜きには、永続的発展は期待できない。
論文の構成においては、中小企業の実態に即して技術の取得に焦点を当て類型化を図り、
企業パターンを以下の2つに分けて論述する。
*業務に既存の技術と言えるものがあり、それにより、成り立っている中小企業
*時代の最先端業種で、日々の業務も技術も模索の中で変わっていく業種
に分けて論じる。経験した事例も途中、内容に含める。
ここでは一般的中小企業を論じる。具体的にはジョブカードシステムで、技術の棚卸が
出来る業種である。(具体的には独立行政法人雇用・能力開発機構「日本版デュアルシステ
ム訓練」で訓練評価法が明示されている業種)
・ OFFJT の重要性
日本は人材育成の中で仕事の教育については、OJT 頼ってきた傾向がある。QC サークル
のような小集団活動も根付いてはいない。先進国内でも OFFJT 時間数は圧倒的に少ないと
いう数値が出ている。
OJT で、教える効率性については、その通りだが、教えられる方は、業務の意味や全体スキ
ームの中での位置づけが分からないという弱点がある。
近年のように、環境激変の状況下では、そもそもその既存業務を覚える意義すら疑われる
ようになりつつある。要するに OJT で先輩が成功体験の中で教えられないという現象も起
きている。
そこで、政府が推奨するリスキリング研修(OFFJT)となる訳だが、これには、会社とし
て新しい分野に進むという意味と、労働者がどの職場でも生きていけるようにという個人
のスキルアップの意味を含む。
規模の大きい会社では、中高年に対してのリストラの際の対応施策としているケースもあ
るだろう。まずは、会社としての研修の位置付けが重要となる。
また、OFFJT であるが故の座学での限界もある。
私も士業事務所経営者としてリスキリング研修を受けてみたが、理解することはできても、
知識で止まってしまう感じがあった。
自分にとって新たな分野は実践してこそ意義があるということである。
いかに実践とリンクさせるか?OFFJT の座組みから検討する必要がある。
セカンドビジネスにおける企業の許容度は、広がり、例えば中小企業診断士において勤め
ながら自分の副業として資格を生かす形は一般化してきた。
また、ミレミアム世代においては資格やキャリアというものをドライにとらえている傾向
もある。
しかし、政府がリスキリング研修を推奨する主旨はそういう意図ではないだろう。
企業としてのダイナミックな展開を検討する必要がある。
・ジョブ型雇用とリンクした教育訓練
近年、時間管理・評価の問題より、職務内容を明確化しようといういわゆるジョブ型雇用
が勧められている。(その逆で、どんな職務でもするというのをメンバーシップ型雇用とい
う)。
政府もこれを推奨している。これを第3者的に評価しようというのがジョブカードであり、
それは、受講した各種の研修や履歴の情報を掲載していくものである。
ジョブ型雇用でのあるべき水準まで、能力を高めようとするとそれが、転職されるリスク
と裏腹であることを事業主は知っているのでジレンマを感じている。
しかし、経営者は労働者の技術は、社会のものとして、オープンなリソースと考えるべき
であり、その上で、技術の伝承や能力評価をクリアーなものとしていくべきである。
先輩の仕事ぶりを見て盗めという昔風の技術伝承は、今の若年層は理解できない。
技術を習得して、他社への転社というキャリアアップのステップを、実は大多数の日本人
は踏まない。離職の多くは人間関係である。
その予防として、このオープンでクリアー教育システムは職場ムード改善に寄与する。
・有期実習型訓練
実践では、社員として入ってきた者への技術の訓練で早期の戦力化を目指す訓練を支援し
た。厚生労働省の助成金名では有期実習型訓練助成金という。
これは OFFJT と OJT を交えた厚生労働省の支援施策であり、本来、職業訓練センターのす
るべきことを民間活用している形でもある。訓練時間の受講生の人件費がバックされるシ
ステムで、外部講師活用などでかかった経費は補助される。OFFJT は、仕事の全体系が分
かるので効果がある。
事業所側にはこれを機会に技術を棚卸するという副次効果もある。
OJT の方は先輩社員が指導役を受け持つ形を取り、社内でのしっかりとした技術伝承の形に
寄与する。
OFFJT 講師は、助成金規程では 10 年間の同業種経験年数が必要である。
関与した事例では、事業主の自ら教えて貰ったがかなりの情熱を注いでおられた。
この事業所では、日々の業務に確かな技術の柱が入ったようなムードになり、会社全体の
自信につながっている。
この施策のメリット・デメリットを上げる。
陽の側面 技術の習得に伴って、自信につながる。
影の側面 新卒を含む若い世代は日々の訓練日誌を書くだけで時間を要する。
それで悩むケースもある。極端な事例では訓練カリキュラムを見た瞬間に習得困難を感じ
て会社を辞めるケースさえある。
ただ、これは、早期に適性が分かったと思えばマイナスではない。
・この類型の中小企業の課題
ここで、大問題は、このようなオープンな技術の事業所は一般的には利益が上がりにく
いということである。言葉を変えれば、その業界の流通機構に組み込まれるれることにな
る。近年では、その他にも外部環境脅威として
*根本的に労働力不足
*原材料高
に加えて、
*法人税(所得税)と消費税の過重感
この時代と現金水準を維持しようとすると、法人税(所得税)のみだった時代と比較して
その消費税分も儲けないと釣り合わないことになる。
また、近年では、経済がグローバル化したが故に、金融危機・災害・パンデミックが伝染
して、正常に事業活動できない期間のスパンが増している。
2000 年に入ってから、リーマンショック、サーズ・コロナ・災害(地震など)と平常に経
営できる期間は 10 年間とない。事業継続がやっとで「何のために事業しているのか?」と
悩んでいる経営者は多い。ただ、論じる主眼ではないので課題抽出だけに終わっておく。
3.ベンチャー企業の人材育成と課題 へ続く
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