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STORYで考える経営戦略〜深い煙の向こう側〜4 最終回


要約動画です。  

 

 

 

主人公、遠野木蝶子の物語は、拙著、「補助金に頼らない経営戦略」でも読めます。

STORYは楽しんでもらえればいいのですが、今回の話のサブテーマは事業拡大は才能か?論理か?努力か?ということです。結論から言えば、才能です。人の能力とはそんなに差はありません。

(この総括も徐々にここに付け足していきます。)

全4回です。

 

ラ天使のエチュード  〜深い煙の向こう側〜

作 西河 豊

CAST 遠野木蝶子 井川大作

 

STORY

 

 

7

あまりに突然の訃報に井川は悲しむことさえ出来なかった。

西陣支店からの情報いよると葬儀は親族だけで、密かに済まされたという。

井川は、いおりにかけつけて、最後のお別れの挨拶を頼みこんだ。

その頃、いおりには番頭格として、京都の老舗ホテルから引き抜いた吉田という専務が一応外部への窓口になっていた。

井川はすんなりと仏壇の前に通された。後から思うと、蝶子が、井川が来ることを遺族に伝えていたのかもしれない。

遺影の遠野木蝶子は整然と変わらぬ微笑みだった。

井川はお世話になりましたと手を合わせた。

吉田の話では、苦しむこともなくあまりにあっさりと逝ったという。

蝶子の「才人」「凡人」の話を思い出した。蝶子さんは才人の人生を歩む代わりに人生を早く駆け抜けることを約束させられたのではないだろうか?

きっとそうだ。だから使命を終えた時、潮時を感じてあっさりと逝ったのだろう。

人は何かを得ようとすると何かを捨てねばならない。しかし、その覚悟を持って生きている人がどれ程、いるだろうか?

蝶子が死んだ時が事業的に最高の状態だった。

その後の株式会社 いおりは?

それをあまり語りたくないのだが・・・

親族としては1子、長男が高校生、それまでは、番頭の吉田が引き継ぐことになったのだが

蝶子は、次の代に事業が円滑にいくようにと事業継承策を施していなかったのだ。

才人の人生は告げないと思ったのか?いや、吉田や息子は凡人だと思ったのかもしれないが・・・

 

8

(最終回)

 かくして、井川は、その5年後に再び西陣支店へと次長に昇格して戻ってきたのだが、いおりは蝶子の息子さん代になり、債権管理口座にはいっていた。

万全だった経営がダメになるのは早いものだなと井川は思った。

支店内に戻り、井川はもう1本煙草に火を付けた。缶コーヒーの缶を灰皿代わりにしようと思った。「いけないんだけどな」とつぶやいた。

 

椅子に座り、保証協会へ出す申請書20件を整理しようとしたが、何か違和感があった。

蝶子さんが何かを言ってくれている感じがした。この書類の何に違和感を覚えたのか、井川はざっと資料を、めくり目を通した。

この西陣地区で、馴染みのある会社名・個人事業主名の名前が並ぶ

やはり織物関係が多い。

力石織物!

この会社も西陣で古い会社で、社長はやり手で有名である。

思い出した。

2週間前に、井川も次長として表敬訪問をした。

その時確か、コロナ禍の中、「我が社は調子ええんですわ」と言っていたはず

この保証協会第4号は、コロナ禍で、売上を落としているという認定を役場で貰って保証協会で保証して貰う融資だ。

確か、その時に試算表を預かったはずだ。井川は自分の机の引き出しからその思慮を探し出した。

早速、今期の売上を見る。

うん?

売上は昨年同期と比較して下がっている。

しかし、その内訳を見てみると、「売上」「その他売上」のうち、「売上」は昨年と同じなのに「その他売上」の方で大きく落としている。

あの表敬訪問の際にも、それを聞いた覚えがある。

力石織物も過去の蓄えで、広い事業展開をしていた。

確か、あの時、社長は「これは、実は馬主としての競馬の競争の賞金ですわ」と言っていたはずだ。力石織物は栗東で、競走馬を多く持ち、「リキ」の冠を競走馬につけていた。

JRAは確か、無観客でもレース自体は休んでいなかったはず、これはたまたま競走馬が走らなかっただけ?

もしそうなら、この融資の基本原理に合わない。出しちゃだめだ

今日はいったん保留にして明日担当者に聞こう。

井川は、融資の検印に対していかに何も見ていなかったことを反省して、その他の先もざっともう一度見直そうと思った。

煙草の煙の向こう側の、遠野木蝶子は相変わらず、微笑んでいた。

井川は「ただの凡人もう少し、がんばりますよ」と蝶子に言った。

目の前の煙草の煙が少しだけ淡くなった気がした。

 

ラ天使のエチュード〜 深い煙の向こう側〜 Fin

 

続く

 

遠野木蝶子の活躍は既刊本でも読めます!

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西河    豊  [ 著 ]


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内容

第1部 補助金に頼らない経営戦略 

第2部 政府施策の方向性を知る  

第3部 心を整え戦略を練る   

第4部 戦略の定石  

第5部 京都の経営戦略の特殊性を覗く

第6部 ラ天使のエチュード〜遠野木蝶子のビジネス闘争記〜

西陣織物編、水商売編、不動産取引編(ダイジェスト)ベンチャー育成編、海外放浪編、ベンチャー育成編 後編

***

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西河 豊 著 株式会社西河マネジメントセンター 監修

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